私の武道歴を簡単にお話させてください。
武道のスタートは、前館長の父と二人の稽古です。中学校のある時期から、毎朝6時から一時間、自宅の居間で稽古をしていました。内容は、基本と移動がほとんどを占め、型と組手を最後に少しやる程度でした。
細かい動作上の指導はそれほどありませんでした。盛んに強調していたのは、「基本を繰り返すこと」、「足腰を鍛えること」、「肚から動くこと」の3点です。当時の私にとっては、特に3点目の「肚から動く」というのは正直よくわかっていませんでしたが、今は大事なことを教わっていたことが分かります。この時期に叩き込まれたことが、後々どこの道場を訪ねても、非常に役立ちました。
20歳前後から、武道学館と並行して、他武道、他流派の道場を訪ね、色々な先生方にお世話になりました。空手諸流派(沖縄系から総合格闘技色の強いものまで)、中国拳法(太気拳など)、合気道、ヨガ、体操(野口体操)などを経験しました。
中でも特に大きな影響を受け、現在も親しくお付き合いさせていただいている方がお二人いらっしゃいます。
お一人目は、合気道のS先生。実力の高さから、コロナ以前は全国から呼ばれ講習会に赴いておられました。70歳を超えた今もますます冴えが増してらっしゃいます。この方には20代の後半から師事し、3年ほどマンツーマンで教えていただきました。
合気道だけでなく、内功法(気功に近い体づくりの方法)や剣術、禅も併せてご指導いただきました。この経験によって、武道共通の体づくり、理合への理解が深まりました。
現在も親しくお付き合いいただいており、最近ではS先生の道場の指導のお手伝いもさせていただいております。
お二人目は、禅のお師匠のO先生。S先生の更に師匠にあたる方で、6年ほど前にご紹介いただき、直接師事するようになりました。
禅のお坊さんなのですが、その数奇な人生経験(熊野山中で5年間火も使わず過ごした、北海道を5年かけて着の身着のままで踏破した等々、映画の世界のような人生を歩まれた方です)からいつの間にか強くなってしまい、武道家の間で隠棲の達人、山の仙人として知られる存在となってしまった方です。
O先生からは、内功法や禅のご指導をいただいており、現在も定期的に通っています。 私の武道観は、この両先生と父の3人からの影響を強く受けています。
父に基礎作りをしてもらい、S先生に原理原則を教わり、O先生に武道の範疇を超えた指導をいただいている感じでしょうか。私自身まだまだ修行中の身ですが、良い師に巡り合えたと思っています。