力を抜く理由

多くの芸事に共通して初心者が再三言われるのが、「力を抜きなさい」ですよね。
注意されたことがない人はいないぐらいではないでしょうか。特に、肩の力みを注意される場合が多いはずです。

では、なぜ力んではいけないのか、改めてここで整理してみます。
私が考えるに、以下の3つが理由です。

①力の流れが阻害される
②力みが相手の反応を呼ぶ
③感覚が鈍くなる

①はよく言われるところです。
足腰から発する力が、肩が力んでいるとそこで滞ってしまい、肩先、手先の突きになってしまう。
これが初心者の方がまず克服すべきポイントであり、うまく力が抜けると、女性や体力のない方でも強い突きが打てるようになるはずです。

②は組手や護身術でよく現れるものです。
例えば、組手で突きを打とうとした瞬間、その意図が肩の力みとなって現れると、相手にそれが読み取られて捌かれてしまう。
もしくは、護身術で手をつかまれた状態から相手を制そうとするとき、自分が力んでしまうと、相手もそれに反応してより力が入ってしまい、技が決まらなくなる。

人間は、目の前や周囲の人の変化をかなり微細に(無意識レベルで)認識していて、力みは必ず相手に伝わっています。
反対に力が抜けていると、相手も力が抜けてしまい、技が決まりやすくなるというのは、護身術などでは顕著に表れます。

日常のコミュニケーションでも全く同じことが生じているはずです。

③は少し上級者向けの話かもしれません。
人間は、固まっているところは固まりとしてしか認識できないのです。凝り固まっていればその分鈍感になります。
逆に力をどんどん抜いていくと、細かく、繊細に認識できるようになります。

型の動きや立ち方の精度を上げたいときは、全身の力をなるべく抜いて、身体の内部に意識を向けてやってみてください。
鏡を見るのは補助程度に留めたほうがよいでしょう。むしろ目をつぶってしまうほうが、より内部感覚に集中しやすくなります。

また、護身術や分解組手で相手の手を取りに行くときは、自分の手の力を徹底的に抜くようにすべきです。
手の力を抜くのは、②の意味で相手の力みを抜くというのもありますが、自分が力を抜くことで、相手の身体の微細な変化が読み取れるようになるのです。
慣れてくると、取った手を通して、相手の身体の内側や中心の変化が分かるようになります。
技のかかり具合が格段に変わるはずです。

手っ取り早く技を決めることを目標にしてしまうと、どうしても力んでしまいます。
相手によってはそれでも倒せるかもしれませんが、それを続けていては、いつまでたっても上達しません。
相手を問わず、力まず柔らかく技をかけるようにする。遠回りのようでこれが上達への近道です。

以上、力を抜くべき理由をまとめてみました。
①はよく言われる理由ですが、②、③は案外意識できていないのではないでしょうか。
ご自分の稽古の参考にされてみてください。

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