私の武道歴 その9 ~O先生

引き続き、私が影響を受けた先生・経験について書いています。
前回までの内容の他、他流派の空手、太気拳、各種体操法なども学びましたが、それらのご紹介は一旦筆をおき、この記事で触れたO先生について今回は書きたいと思います。

O先生は、S先生のさらに師にあたる方です。
私は10年近く前にご紹介いただき、直接師事するようになりました。

O先生は禅の老師で、いわゆる武術家、武道家ではありませんし、それらを習われたこともありません。
ただ、幼少期からの色々な経験の結果、ご本人は意図していないのに「強く」なってしまい、武術家の間で隠れた達人、「謎の禅僧」として知る人ぞ知る存在になってしまった方です。
私は足元にも及ばない方で、一度お会いできただけでも幸運なのですが、何とも有難いことに継続的に指導をいただいています。

O先生からご指導いただいたのは、座禅、立禅、動功です。
座禅は皆さまも大体ご存じのもの、立禅と動功は気功の動きをイメージしていただくといいかもしれません。
動き自体はとてもシンプルです。

指導方法は、先生は単なる形や名前には意味がないというお考えなので、何をやるかから全て身振り手振りのみ。
立禅も仮に付けた名前に過ぎないので、稽古では手で立禅の形を作り、「これ」と言うだけです。
形式上のポイントも数える程度しか指示されたことがありません。
その代わり、立禅や動功をしている私に触れ、状態のチェックをしながら、「花も立禅している」、「風がふくように動きなさい」などの言葉をかけてくださいます。
どれも雲をつかむような表現です。
私も理解できないまま、何年も手掛かりすらなく試行錯誤し、先生に押されては崩されながら続けていました。
ですがある日、お茶をしながら外で風に揺れる花を見て、ふと、「ああ、確かに、花も立禅しているな」と思えたときがありました。
すると、そのあとの稽古で、「息の根が生えてきたね」と認めていただき、それ以来、「松尾さんも(この内容を)教えなさい」と言われるようになりました。
技術的に何か変わったわけではないはずですが、先生には変化がお分かりになったのでしょうか。
先生からの勧めもあり、現在の武道学館では、金曜日二コマ目の稽古などで立禅と動功を取り入れています。

先生から教わったのは、強くなるための方法論ではありません。
先生も、「人に抜きん出て何の益ありや」とよくおっしゃっていました。

では、あの稽古は何なのか。
安易な言語化は控えるべきと思いますが、
あえて今の自分の解釈で表現すると、「真に自分自身として立てるようになるための一つの手段」というところでしょうか。

この解釈も今後変化していくと思います。
ずっと探求し続けるんでしょうし、それ自体が今の私の楽しみです。

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