私が先生方から教えを受け、自分なりに稽古を重ねる中で心掛けるようになったことをこの機に書いてみます。以下の5つです。
- 土俵を変える・質を変える
- 分からないことを大切にする
- 数を重ねる
- 稽古を楽しむ
- 道友に感謝する
今回は最初の「土俵を変える・質を変える」 についてです。
これは、前回記事でご紹介したS先生に師事した際、最初に言われたことでもあります。
スポーツ競技は、お互い対等な条件のもと、その時々の勝ち負けを競うものです。
勝つために、相手に比べてより速く、より強く、より多くのテクニックを身に付けることを追求します。
同じ評価軸=「土俵」の中で、量的な優劣を競うものといえます。
必然的に、より体格が大きく、筋力があり、若い方が優位になります。
スポーツ競技は、対等な条件下でギリギリの勝負を競うことに醍醐味があるわけですが、武道が想定する状況は、そもそも対等でもありません。
相手の方が大きい、若い、武器を持っている、人数が多いなど、自分が不利な状況もありえるわけです。
そんな中で相手と同じ評価軸で競争しても、早々に限界が見えてしまいますし、
さらには、護身を目的とする武道では、勝つ必要さえないかもしれません。
そこで、武道では「土俵を変える」という発想が必要になります。
たとえ相手と対峙しているように見えても、実はそもそもの対立軸を変えるべき、ということです。
先生からは、「本当に使えるようになるためには、土俵を変えないといけないよ」と言われました。
「土俵を変える」。少し具体的には、筋力に筋力で対抗するのではなく、逆に脱力して自身の体重を使うというのも一つの例です。
40~50kgの女性であっても、体重を一つにまとめて突くことが出来れば、かなりの衝撃を生むはずです。
小さな老人が若い大男を吹っ飛ばすような達人の世界ですね。
もちろん、そう簡単に出来ることではありません。
「土俵を変える」ためには、まず根本的な発想を、「量を増やす」方向から「質を変える」方向へ変える必要があります。
強い突きを打つために、ただ筋力を強化するのではなく、余計な力を抜き、重心の移動がロスなく拳に伝わるような動きと、それを可能とする身体を作る方向に変えていくのです。
一朝一夕にできるものではありませんが、一度身に付けば、そう簡単には衰えません。
なので、老人になっても若者を手玉に取る武道の達人が稀に存在するわけです。
達人クラスの人が、ただ軽く腕を出したように見えたとしても、素人がやるのとは異なります。
立ち方、歩き方の質がそもそも異なるのです。
自分もまだまだ道半ばですが、どうせやるなら、皆さんとその方向を目指したいなと思っています。
第2項目以降は、さらにこの「質を変える」ために必要と思っていることです。
これはまた機会を改めて。