これまで、「量質の転換」を起こすために、①何を、②どれくらいの数、③どれくらいの期間、やるとよいか書いてきました。
今回は最後に、④どのような意識で、について考えてみます。
稽古や鍛錬を、どんな意識でやるかはすごく大事です。
同じ稽古をやっていても、意識の持ちよう次第で、年数を経た後の表れ方は全く異なってくるものです。
回数を重ねることの効用は、②どれくらいの数で書きましたが、注意が必要なのは、「回数は大事な目安だが、目的ではない」ということです。
例えば、以前ご紹介した四股踏みをやるとします。
このとき、四股踏みを1,000回こなすことだけを目標とし、一回一回を全体の1,000分の1のものとしてまうと、残念ながら、「質の転換」の効果は高まりません。
回数を重ねているだけに、足腰の筋肉は強くなりますし、スタミナもつくと思います。鍛錬の「鍛」の時期にはこれでもいいかもしれませんが、単に鍛えるだけが目的なら、もっと効率のいい運動があるはずです。
より望ましいのは、同じ1,000回をやるのでも、
一回一回を全体の1,000分の1とするのではなく、丁寧に積み重ねた一回一回が、「結果として1,000回になる」ような意識でやることです。
見た目の形だけでなく、内部の働きを意識して、足を上げるとき、下げるとき、重心を移動するとき、など一個一個の動作における内部感覚の変化を観察し続けるのです。
1,000回という「量」を重ねつつ、一回一回の「質」を高める。
これによって、「量質の転換」を促すことができるのです。
これは、普段の稽古でも同じです。
初級のころは、まずは動きに慣れること、大きく動くことが重要ですが、
中級・上級位からは、内部の感覚・働きに意識を向け、内部の変化が外部の動きや技の緩急、力強さとなって表れるよう行う。
そのように意識すると良いのではないでしょうか。
ちゃんとやればやるほど、身体より頭を使っている気がするはずです。
頭から汗をかくような感じでしょうか。
終わった後は、心身ともにすごくすっきりします。
ぜひ、普段お一人で体を動かすときや、道場での稽古で意識してみてください。
さて、次回は私が心掛けていることの4番目、「稽古を楽しむ」について書く予定です。