「自分を拠り所とする」

O先生に学んだことは沢山あります。
年数を経ても未だに未消化のもの、年数を経て理解が変わるもの、まちまちですが、中でも強く意識しているのが、「外部の権威に頼らず、自分のみを拠り所とすること」です。

先生ご自身も、ある時期まではTV出演など多くの引き合いを受けていたそうですが、全て断って山中に隠棲されていました。
ご自分のことを、何の肩書もない「野良僧」だとよく笑われていました。

でもこれって、言うは易しで本当に難しいことだと思うのです。
世の中の評価は、「○○のxxです」の○○でほとんど決定されてしまいます。

私は仕事で研修の講師をやらせていただくことがあります。
まず初めに自己紹介をします。
その時、何の経歴、肩書もなく、ただの「松尾です」では、自己紹介が成立しません。

娑婆で生きる以上、ある程度の「○○」を使うことはやむを得ないのでしょうが、私は極力それに頼りたくないですし、ましてや「○○」をコレクションしたり、誇ったり、他人をそれで見るようなことはしたくないなと思っています。

さて、武道学館には段級とその審査があります。
人間は明確な目標がある方が、成長が促進されるのは自明なので、上達のための方便として、大いに利用していただければいいと思っています。

ただし、あくまでも方便、「○○」の一種です。
虚実でいえば、段級の数字は虚、実と言えるのはそれを目指す過程でご自身の身に付いた力量のみです。

空手は、身一つで全てを表現できるすばらしい体技ですが、反対に言えば、少し動いた瞬間に力量は一目瞭然で、会社のように肩書が効力を発揮する世界ではありません。
くれぐれも虚にとらわれることのないようにしたいものです。

「道場」という言葉は、元々は「仏道修行の場」を指す言葉です。
武道学館は仏教を学ぶ場ではありませんが、日常とはちょっと異なる空間でありたいのです。
娑婆での肩書・立場を離れ、段級にこだわることなく、一個人としての稽古に専念する場にして参りましょう。

まずは見学から!

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